こんにちは、ライターEtsumaです。
2020年6月19日以降、シンガポールでは経済再開ステップの「フェーズ2」のままとなっていますが、すでに様々なニューノーマルが定着してきています。
公共の場でのマスク着用義務、入店時の検温と登録システム(Safe Entry)、5人までの会食などなど、日常生活では当たり前のこととなりました。
日本からの帰国者も増えてきており(*)、中心部の飲食店や買い物スポットには、徐々に日本人の方の姿が戻ってきているようです。
(*)現時点において、日本からの帰国者は、入国と同時に政府指定のホテルで14日間の隔離生活が求められています。
慎重に経済再開を進めるシンガポールですが、やはり懸念されるのは失業率の問題です。人材開発省(MOM)の統計によれば、今年の第二四半期で、過去10年間で最も高い2.9%となりました。
そこでシンガポール政府は、国民の雇用を優先的に保護するため、9月1日以降、外国人に対するビザ発給要件の厳格化を決定。今回の措置は、主に外国人向けビザで雇用する日系企業にとって、今後の採用計画や人員配置に大きな影響を与えそうです。
今回は、新たな政策とCOVID-19国内状況のアップデートをお届けします。
8月末時点での感染状況

シンガポールの感染者数は累計で5万人を超えていますが、死亡者数は27人(7月15日以降、0人)と、致死率が非常に低いことが特徴的です。
本日時点では、退院者数も5万人を超えており、ICU患者に至っては0人となっています。
- 国内感染者の総数:5万6,771人
- 退院者数:5万5,586人
- 隔離中:1,084人
- 入院中:74人
- ICU:0人
市中感染の数は、1か月以上10人以下と減ってきていますが、現在も多くの飲食店では、座席数を減らしたり、人数制限を行うなど、セーフディスタンスを徹底しています。
もちろんセーフディスタンスを怠りルールを破ると、お店側だけでなく利用者としても罰金刑が科されることがあります。感染状況が落ち着いてきたからといって、油断しないように気を付けましょう。
就労ビザ発給要件の厳格化

世界経済を直撃したCOVID-19パンデミックですが、シンガポールも他国と同じように、失業率の問題が浮上しています。
2020年第二四半期の統計では、全体の失業率は2.9%ですが、これはシンガポール国民だけでなく、永住者や外国人労働者を含みます。この数字だけを見ると、2003年SARS時の4.8%、2009年リーマンショック時の3.3%に比べると、それほど悪化していないように見えますが、実は、この中で最も打撃を受けているのがシンガポール国民で、失業率は4%となっています。
シンガポール人材開発省(MOM)は、外国人からローカル雇用への切り替えを促進するため、9月1日以降、新規就労ビザの発給要件の厳格化を決定しました。
- 2020年9月1日以降、就労ビザ(EP)取得の最低必要月給額を、3,900Sドル→4,500Sドルへ変更
- 2020年9月1日以降、就労ビザ(SPass)取得の最低必要月給額を、2,400Sドル→2,500Sドルへ変更
- 金融業界のみ、2020年12月1日以降、就労ビザ(EP)の最低月給額は、5,000Sドルへ変更
- 現在ビザ保有者の場合は、2021年5月1日以降の更新から適用
すでにシンガポールで働いている方であれば周知の事実ですが、現地の就労ビザ取得には、「年齢×学歴×月給」のバランスを満たす必要があります。
年齢が上がれば相応の月給を求められるため、仮に40代の駐在員であれば、最も若いEP申請者の月給の約2倍が相応とされているため、少なくとも9,000Sドルの月給が求められます。
今回の措置により、外国人駐在員の数は減少することが予想されますが、直接ローカル雇用を促進するかどうか、疑問の声も上がっています。
シンガポール政府の救済策

シンガポール政府は8月17日、経済支援策の第5弾を発表し、過去4回行われた総額929億Sドルに、追加で80億Sドルを追加投入することが明らかになりました。
今回の施策の目玉は「雇用支援」で、シンガポール国民・永住者の給料の補償期間を、従来の8月迄から、2021年3月まで延長することが決まりました。
これまで、給与上限4,600Sドルとして、業界別に25%~75%、サーキットブレーカー(都市封鎖)の行われた4月・5月の給与分については、全セクターで75%補償と、継続的に支援を行ってきました。
今回の発表により、業界別に10~50%の補償が、9月以降~2021年3月まで延長されることになります。
また「ヘルスケア」「金融」などの成長分野においては、シンガポール国民を新規採用した場合、月給の最大25%を1年間助成するなどの、インセンティブも導入されます。
このように現在、シンガポール政府は、シンガポール国民の雇用促進に力を入れています。
しばらくは、外国企業にとって厳しい雇用環境となりますが、政府の方針を尊重して、ポストコロナを乗り切りましょう。
(参照元)
- シンガポール保健省(MOH):“COVID-19 Situation Report”
- シンガポール人材開発省(MOM):“Summary Table: Unemployment”
- CNAニュース:“Singapore jobless rate hits 2.9%, highest in more than a decade; retrenchments double”
- NNA ASIA アジア経済ニュース:「9月から就労ビザの要件厳格化 専門職、最低月給4500Sドルに」
- シンガポール経済開発庁(EDP):「新型コロナウイルスに対する支援」
JETROビジネス短信:「ヘン副首相、総額80億Sドルの追加経済支援を発表」