こんにちは。ライターEtsuma(@Etsuma2)です。今回は、シンガポールのニッチな就労許可についてのお話です。
シンガポールで永住権(PR)を持たない日本人が働く場合、一般的に必要とされる就労許可は、Employment Pass(EP)とS Passです。
しかし2019年、シンガポール国民・永住権保持者の配偶者・子供のLTVP/LTVP+保有者に対する、新しい就労許可ができたことをご存知でしょうか。
それは、シンガポール人材開発省(MOM)と入国管理局(ICA)が共同で制度化した、Pre-Approved Letter of Consent (PLOC)です。
筆者自身がPLOC保持者で、更新手続きの際にミスをして焦り、PLOCに関する日本語での情報も皆無であった為、今回記事にすることにしました。
「PLOCとは何?」「PLOC申請し忘れたらどうなるの?」「雇用主はどうすればいいの?」などいった疑問に対して、解説します。
PLOCとは?

2020年12月時点の発表によれば、シンガポール労働人口で、LTVP/LTVP+保有者は約0.5%、全体で17,890人程度とみられています。割合は非常に少ないですが、PRに準じた就労の自由が与えられています。その一つが、PLOCです。
PLOCを持つと、”シンガポール国内で就業先が未定でも働く権利が得られた状態”で、シンガポール国民/永住権保持者の配偶者・未婚の子供の、LTVP/LTVP+保有者が申請できます。
LOC(Letter of Consent)との違いは、LOCは雇用主がMOMに申請するのに対し、PLOCはLTVP/LTVP+保有者自身がICAを通してMOMに申請するもの、ということ。
時々ネット上で”LOCで働くことができるのはLTVP/LTVP+保有者である”という情報を目にしますが、厳密に言えばPLOCを持つLTVP/LTVP+保有者の場合、次に挙げる職業以外は、MOMのポータルサイトでFIN番号を入力した時点で、「LOC申請は不要」という警告文が出て、LOC申請はできません。
ジャーナリスト
新聞の編集者
宗教に関連した職業
テレビのプロデューサー
など
(PLOC保有者でLOCが必要な職業一覧はこちら)
PLOC付帯のLTVP/LTVP+保有者であれば、殆どの職業はLOC不要で働くことができるのです。
PLOC申請の注意点

では、PLOCはどのタイミングでどのように申請し、いつ付与されるのでしょうか?
実は、PLOCの申請は、LTVP/LTVP+の新規申請・更新の際の手続き内で行われます。「PLOCを必要としますか?」に対して、YESかNOを示すだけです。
ここで、YESをつけておけば、LTVP/LTVP+の新しいカードが発行されてから1週間以内に、メールでPLOCが届きます。
それでは、もしNOをつけてしまい、後になってPLOCが欲しくなった場合は、どうしたらよいのでしょうか?
答えは、「カード発行後、2日経ってからMOMに連絡を取る」です。
MOMの問い合わせ窓口へ「PLOCを申請したい」と伝えると、”Authorisation to obtain and verify information provided for application of Pre-Approved Letter of Consent to work in Singapore”という、用紙が一枚メールで送られてきます。
PLOC申請の目的で、MOMがICAから自分の個人情報を取得していいですよ、という同意書になります。名前を書いてサインをするだけです。これをMOMに返信すると、PLOCが発行されます。
筆者の場合は、今回間違ってNOを付けてしまったために、この方法を取りましたが、MOMのレスポンスは速く、問い合わせ翌日には同意書が送られ、提出した翌朝9:00前にはPLOCが届いていました。
LOCとPLOCを混同してしまう人もいるかもしれませんが、、PLOCはあくまでLTVP/LTVP+保有者個人のものになりますので、ここまで雇用主が取るアクションはありません。
PLOC取得後、雇用主が行うべきこと

PLOCが無事付与された後、雇用主が行うことは、MOMのポータルサイトから、e-Notificationを提出することです。MOMに対する、「PLOC保有者を雇用します」という旨の通知になります。
一つ注意点は、MOMのポータルサイトには、PLOCの項目がありません。Apply→Letter of Consent(LOC)へ行き、FIN番号を入力したところで警告文が出たら、メッセージ内のリンク「e-Notification」に進みます。
ここで、PLOCが付与された日や、LTVP/LTVP+保有者の個人情報を入力し、Submitすれば終了です。
重要な点は、1.LTVP/LTVP+取得 → 2.PLOC付与 → 3.MOMポータルでe-Notification、の順番は、必ず守らなければならないということです。
もし雇用主がLTVP/LTVP+取得直後にe-Notificationに進んでしまうと、まだ新しいPLOCが反映されておらず、旧LTVP/LTVP+に付帯したPLOCの情報を拾ってしまいます。結果、そのPLOCは失効しているので、後々MOMから指摘が入ります。
LTVP/LTVP+を更新した勤務継続中の人は、ICAから「1か月就労を続ける許可」を含むレターを受け取っています。この1か月の間に、新しいPLOC(だいたい翌日)が届き、そのあとe-Notificationを提出できるので、時間的な余裕は充分あります。
以上が、PLOCの申請~雇用主のe-Notificationまでの一連の流れです。
在シンガポール外国人の間でも、日本人のLTVP/LTVP+保有者は少なく、マイノリティに近い存在かと思います。しかし今回、同じように困っている方のお役に立てればと、記事にさせてもらいました。少しでも本記事の情報が参考になれば幸いです。
(参考元)
- MOM “Pre-approved Letter of Consent”
- ICA “Response to “Don’t separate foreigner-Singaporean couples” (ST, 17 May 2019), “Don’t consider only salary when granting PR status” (ST, 20 May 2019), “Singapore shouldn’t lose out on talented foreign spouses” (ST, 22 May 2019)”
- Fragomen法律事務所 “New Work Pass Type Introduced”
- CNA “0.5% of Singapore’s workforce are long-term visit pass holders”